質問:賃貸アパートを退去する際、大家から「原状回復費用として敷金全額を充当する」と告げられました。壁のクロスの変色や畳のへたりは長年住んだせいで、明らかに経年劣化のはずです。こうした自然な消耗について大家は敷金からどこまで差し引けるのでしょうか?納得できない場合の具体的な対応方法を教えてください。
A1:法律上の考え方
原状回復は賃貸借契約と民法の一般原則によります。入居者の通常の使用による経年劣化や自然消耗は借主の原状回復義務の対象外とされるのが原則です(国土交通省のガイドラインも参照)。一方で故意または過失による損耗・汚損(破損、落書き、極度の汚れ等)は借主の負担となります。契約書に明確な特約があっても、過度に借主不利な条項は無効となる場合があります。
A2:納得できないときの実務的対応
まず現状の写真や入居時のチェックシート、修繕履歴、領収書等の証拠を整理します。大家に見積書と内訳を求め、経年分の償却をどう扱ったか確認しましょう。話し合いで解決しない場合は、賃貸トラブルを扱う消費生活センターや自治体の相談窓口、住宅紛争処理機関に相談すると仲介や助言を受けられます。内容証明郵便で請求や異議を通知するのも有効です。
A3:最後の手段と費用の目安
示談で決着しなければ少額訴訟(60万円以下)や通常訴訟で争う選択肢があります。弁護士に依頼すると着手金や報酬がかかりますが、勝訴すれば敷金返還と損害賠償、弁護士費用の一部を請求できることもあります。まずは証拠収集と専門窓口への相談をおすすめします。
